ツアー訪問事業所

立ち上がった88人の農家女性

陽気な母さんの店株式会社 石垣 一子さん
  • 事業内容
    農産物直売所・飲食店(仕出し・食堂)・体験事業(加工体験・農作業体験・郷土料理づくり体験)

農家の嫁が社会と繋がるために

 朝8時。陽気な母さんの店は、搬入と仕出し弁当の準備に追われていた。自分の畑で丹精込めて作った農作物を商品棚に並べる女性たち。焼きおにぎりを黙々と作り、仕出し弁当用の総菜をパックに丁寧に詰めているスタッフたち。ここには朝から生き生きと働く母さんが溢れていた。

 陽気な母さんの店株式会社の代表取締役を務める石垣さんは、専業農家に嫁ぎ一途に農家の嫁としての役割を全うしていた。しかし、ある時、その立場の弱さに疑問を抱き「社会とのつながりを感じたい、自分達が働いた成果を見たい」と立ち上がった。

 1983年に野菜や果物の直売から始め、地元のそばの味を受け継ぐ「中山そばの会」を発足。そのような中、自分たちが自発的に活動していくことにやりがいを感じるようになり、まだまだ男性が主導権を握っているという背景があるもの、同じ志を持った農家の女性88人で直売所を立ち上げる嘆願書を行政に提出した。結果は却下。しかし、「このままでは、今後女性活躍の場はなくなる」という想いから、「何としてでも実現させる」と腹をくくり、任意団体「友の会」を設立。仲間たちで出資し合い、ついに平成13年4月に現在の店を立ち上げた。

 

 現在陽気な母さんの店は、直売所・仕出し弁当販売・菓子製造・野菜の宅配・体験受け入れなど様々な事業を展開しており、何と年商2億円を突破している。

生産者と消費者の立場を活かして

 地元の農家の母さんたちは、生産者であり消費者だ。その視点を生かし、「安心で安全な食材の提供と地域の食や文化を伝える」ことを経営のコンセプトとしている。店の事業のひとつである「体験学習の実践」も他の直売所では見られないオリジナル事業だ。そば打ちやきりたんぽ作り、りんごや梨などのもぎ取り体験の受け入れなど、年間200件を超える体験を受け入れている。

 「地元の小学校や修学旅行生、最近は地元の福祉施設などからも体験に来ていただいています。秋田県大館にある豊かな作物と食文化をたくさんの人に知ってもらいたい。それも農家だからできる、母さんだからできる仕事だと思っています。」

 

常に探究心を忘れない

 「以前は、お客様との交流の中で野菜を美味しいと言ってもらえたり、農家の仕事を理解してもらう事がやりがいでした。もちろん今もそれは変わらないが、加えて「経営」を追求する事もひとつのやりがいになっています。」と石垣さんは言う。

 「専業農家の嫁という立場で、直売所経営というジャンルに挑戦し続けてきました。家にずっといたら経験できなかったことでしょうね。知らなかった世界を模索し、常に刺激がある環境が面白い。新鮮な気持ちを持ち続けられることに常にワクワクしています。」

この仕事に向いている人とは?

 「大館は何でもできるところです。高齢化により余っている農地を借りることも容易ですし、空いている民家を再利用して民宿なんかもできます。やりたいことがハッキリしていれば、チャレンジしやすい環境だと思います。自然が好きな方、物の豊かさよりも心の豊かさを求める方にぜひ来ていただきたいですね。そんな方は、うちのお店でもきっと楽しく働けると思いますよ。」

 「この店を後世に残したくて、株式会社にしたんです。農家の母さんたちが頑張った足跡を残したい、そしていつか自分たちがリタイアしたとき、語り継いでいける場所にしたいという想いを持って、今頑張っています。」

 石垣さんの言葉には、農家としての誇りが溢れていた。どんな人にも役割があり、頑張ることのできる場所があり、それを成果として受け取ってくれる人がいる。だから人は頑張れる。そんな場づくりをしている石垣さんの笑顔には、強さと温かさが溢れていた。

紹介映像