ツアー訪問事業所

想いを表現する伝統の“創造美”

由利本荘市御殿まりを愛する会  阿部 登志子さん
  • 事業内容
    本荘ごてんまり製造職人

ひとつのまりに想いを込めて

 通された一室には、ゆうに100を超すであろう色彩豊かな本荘ごてんまりが並んでいた。見惚れるとはまさにこのこと。しかしよく見れば、一つとして同じものはない。全てのまりの模様は全く違う。

 本荘ごてんまりは秋田を代表する工芸品の一つで、御殿女中が姫のために作った遊び道具が発祥といわれている。後に主婦の内職として普及したが、パートなど外で働く女性が増えたことで制作者が激減。現在ごてんまり作りに従事している人は、高齢者が多いという状況だ。

 古くから伝わる基本模様も存在するが、ごてんまりを制作する醍醐味は自分の想像をごてんまりに投影し、表現できるところにある。まり自体をキャンバスに見立て、模様や風景、モチーフを編み上げていくことが可能なのだ。そして、三方に大きな房をつけるのも本荘ごてんまりの特徴だ。

仲間と伝統を作っていく

 阿部さんがごてんまりに携わるようになって約30年。今まで数えきれないほどのまりを製作してきた。現在は月に6回、秋田市と由利本荘市にある教室でまり作りを教えている。その他コンクールに出展したり、学校の部活動に出向いて小学生に教えたりと活動は多岐にわたる。数は多くないが個人受注もしているという。

 贈り物や装飾品として精力的に制作していく中で、一番のやりがいは「仲間と切磋琢磨し合えること」だと阿部さんは語る。

 「仲間と時間を共有して、仲間の作品から刺激を受ける、制作意欲をもらえる、こんなに幸せなことはないですよ。私にとってかけがえのないもの。それから、ごてんまりは贈り物として心を込めて作っていますが、その一つ一つが受け継がれ伝統になっていくものを作らせてもらっていることに趣味の域を超えて誇りを感じています。」

この仕事に向いている人とは?

 「基本的には刺繍なので、手仕事・針仕事が好きな人は向いていると思います。」と阿部さん。さらに、もう一つ注文をつけるとするならば“故郷を想う心”があればなお良いという。「ごてんまりは作り手にとって表現の場です。しかし他にも、伝統工芸として故郷を思い出してもらえるツールとしての役割もあります。作り手が受け継いでいってほしい故郷への想いを込めて作れば、手にした人にも伝わると思っています。」

可能性はいくらでもある

 「まりは、丸く収まっているという意味で大変縁起がいいものなので、贈り物として制作する場合が多いです。婚礼の場合は家紋を刺繍するし、サッカーがすごく好きな人に贈る時はサッカーボールの模様にしたこともあります。歴史あるものだけど、融通の利かないものにはしたくない。もっとごてんまりの良さを広げていきたいです。」

近年は既存装飾品としてだけではなく、小さいサイズのものや、ピアスなどのアクセサリーも制作している阿部さん。どんな模様も表現できるごてんまりだからこそ、その可能性は携わる人次第でいくらでも広がっていく。

 話している間も、正確な手つきですいすいと刺繍を施していく阿部さん。「一日だって手放せないの。これは私の生きがいで、相棒だから。」とはにかむチャーミングな姿は、艶やかで可愛らしいごてんまりのようだった。

紹介映像